日本国内において、2000年代から徐々に増加してきたフードバンク数は、困窮者問題などの福祉的ニーズと食品廃棄問題という環境的ニーズに応えるかのように、2015年以降急速に増加しており、2022 年5月現在、178のフードバンク団体(フードパントリー、子ども食堂を除く)が確認出来ています。また日本政府が令和2年に定めた「食品 ロスの削減の推進に関する基本的な方針」にある基本的施策の一つは、フードバンクなど未利用食品を提供する活動に対する支援であり、フードバンクが食品ロス削減や生活に困窮する人々への救済の一端を担う重要なプレイヤーとなっていることが分かります。同時に、食品ロス問題や生活困窮問題に関する取り組みは、フードバンクにはじまり、とくにコロナ禍以降、フードパントリー、子ども食堂などコロナ渦に伴う食糧の配布・宅配、フードドライブ、など近年は多様化してきており、広義の意味でのフードバンク業界として担うべき社会的役割が問われています。一方で、日本における事業系食品ロスの発生量のうち、フードバンクが扱う食品量は僅か推計0.2%に留まっており、フードバンクが今後担うべき役割の伸び代は大きいと考えられます。
本事業では、食品の受け皿(ネットワーク、個別団体の活動)を拡充することを目的としており、フードバンクを広義の意味でとらえ、フードバンク、フードパントリー、子ども食堂を含む「食品寄付を受け取り、保管し、提供する」活動を展開する団体及びネットワークをフードバンクと定義しています。一般的に、フードバンクは企業と個人のどちらからも食品を受け取り、渡し先は福祉施設と個人のどちらにも渡す活動を指しています。フードパントリーとは個人への食品提供を行う活動を指しています。
今年9月から、本事業のネットワーク強化における全国9ブロック(北海道、東北、関東、北陸、近畿、東海、中国四国、九州、沖縄)のフードバンク情報交換会が少しずつ動きだしています。本事業の事務局として、早速、幾つかの情報交換会に参加させていただきましたので、そこから見えてきた日本国内におけるフードバンク団体やネットワークの状況を少しお伝えできればと思います。
上述の通り、日本においてフードバンクの役割は社会的にも未だかつてなく大きくなっており、食品をもとめる施設や個人及びフードバンク活動を展開する団体も増え続けています。一方で、現状の日本のフードバンク団体は、スタッフの熱い思いを胸にボランティアベースで運営されている団体が大きな割合を占めており、スタッフは本業を持ちながらも朝晩、休日を返上して活動を支え続けているケースも散見されます。努力が実るほど、社会的な責任と共に活動を支える事務局の業務量も増え、少数精鋭のボランティア事務局員にかかる負担も大きくなり、持続可能な運営状況とは言えない現状が見えてきます。
現在のフードバンク団体/ネットワークが抱える主な課題を以下に整理してみました。
(1)食品提供をもとめる施設、個人は増えているが、提供食品が不足している
生活に困窮する人、食品をもとめる施設、個人はコロナ禍等以降、急激に増えており、問い合わせは数倍に拡大している団体もあると言われている。実際、食品の提供をもとめるニーズが取り扱う食品量を超えている、という声が多くの団体から聞こえてくる。SDGsの取り組みが企業や日本社会全体に浸透する中で多くの企業が余剰食品を社会に還元しようという動きもある一方で、以下の様な要素が、日本全体としての余剰食料品のフードバンクにおける取扱量を増やす素材要因となっている。
(2)ボランティアで事務局を支えることの限界
団体によっては、本業や家庭の業務等をおこないながら、フードバンク団体代表としての仕事と事務局の仕事を兼務している。(団体によっては、さらに団体間のネットワークの仕事も担っている)
フードバンク団体/ネットワークの事務局の業務は主に、「企業・中間支援団体とのコミュニケーション、受付の調整・配送の日程調整」「食品提供先となる個別団体や個人の希望のとりまとめ」「食品の受け渡し」「左記に関わる情報の整理、報告、発信」「これら活動を支える企画、意思決定、資金調達」等などがあげられる。
(3)資金調達の難しさ
生活に困難を抱える個人あるいは支援施設への支援活動という性質上、利用者から費用をとることが困難である。目の前の活動で手一杯であり、広報や営業に注力することが困難である。助成金や補助金などを得ることに関しては、単年度、一過性のものが多く、また人件費に充当できるものが少ないため、長期的に事務局を支えていく資金としては慎重に対応する必要がある。(事業を拡大し人材を確保できても、資金がなくなった瞬間に事業縮小・人材解雇をしなくてはならない)とくに、ネットワーク団体では、直接支援に比べ資金(寄付、助成金等)の調達が困難である。
以上、今回は日本のフードバンクにおける現状をお伝えしました。フードバンクの現状についてさらに詳しく知りたい方は、10月8日(土)14:00から埼玉フードパントリーネットワーク主催のシンポジウム「子育て応援フードパントリーを考える(ZOOMもしくはさいたま共済会館)」が開催されます。以下のリンクからシンポジウム詳細情報をご確認のうえ、ぜひ参加してみてください。
「シンポジウムin埼玉 子育て応援フードパントリーを考える~埼玉モデルの今までとこれから~」
http://saitama-fpn.main.jp/news/news-release
事務局より
(農林水産省フードバンク活動強化 緊急対策委託事業)
“フードバンクとSDGs”
foodbank ikorsapporo,(参照2022-10-1).