2023年2月14日(火)「農業女子アワード2022」が、東京ウィメンズプラザ(東京都渋谷区)(一部傍聴はオンライン配信)にて開催されました。
115件の応募の中から一次審査を経て、各部門3組のファイナリストが集結。べストウーマン賞(女性農業者)、ベストグループ賞(女性農業者グループ)、ベストユース賞(小学生~25歳未満の若者)、ベストファミリー賞(家族経営体)、ベストカンパニー賞(法人 経営体)の最優秀賞を目指しました。
最終審査会では、各部門のファイナリストのプレゼン動画を上映し、質疑応答と最終審査が行われました。
まずは来賓挨拶として、農林水産省 村井正親経営局長によるスピーチ。
日本の農業がターニングポイントを迎えていることを受け、女性や若者のアイデアが農業、食やくらしの活性化につながること、さらにはダイバーシティ経営が農業の持続可能性や多様性につながることが述べられました。
また今回の農業女子アワード2022が、これからの農業において、女性や若者を始めとする多様な方々が活躍できる環境づくりに貢献できることを期待するという、激励の言葉もいただきました。
ファイナリスト15名によるプレゼン動画の上映とそれを受けての質疑応答では、これまで の活動や理念なども語られ、どの応募者からも熱い思いがあふれ出ていました。
緊張感が漂う会場ですが、応募者のみなさまは、堂々と答えてくださいました。
まだ学生でありながら家族の一員として農業に向き合っている方や、コロナ禍の逆境の中で農業の新たな分野に挑戦している方もいらっしゃいます。
みなさんのスピーチからも、それぞれの課題と真摯に向き合い行動を進めている姿が伝わってきます。
質疑応答の後、協賛企業6社様の取組みについて動画等による紹介が行われました。
《協賛企業》
井関農機株式会社
オイシックス・ラ・大地株式会社
カネコ総業株式会社
クロスプラス株式会社
城北信用金庫
株式会社丸山製作所
当日会場にお越しいただいた井関農機株式会社の三輪田克志様より、取り組みについてのご説明をいただきました。
「私共は、食と農と大地のソリューションカンパニーということで、豊かで、持続可能な社会の実現へ貢献していきたいという思いで取り組んでおります。感覚で行う農業からデータに基づく農業へ移行するため、雑草の抑草や水稲の生育予測などを技術でサポートしています。
地球環境に優しい、そして生産者がきちんと利益を得ることができる、そのマッチングを大切にしております。
そういった事業を行う参画企業の私共としても、今回のプレゼンは非常に興味深い内容でした。すばらしいプレゼンをありがとうございます。」
各協賛企業様の紹介のあと、いよいよ審査結果の発表です。
ベストファミリー賞
まずは、「年齢・性別・固定的な役割分担意識に関係なく個性を生かした農業経営を行う家族」に贈られるベストファミリー賞。
選ばれたのは、柴崎農園さんです!
受賞理由(講評)
出産をきっかけに農業に携わるようになり、「子どもや両親のためになる」と知ったという柴崎さん。
積極的に子育て世代を雇用している点や、従業員の家族にも優しい点、さらには地域との共生を心がけている点が評価の対象となりました。
受賞者喜びの声
「タイトなスケジュールで作った動画でしたが、よくできたなと自分でも思い、賞をとることができてうれしいです。すぐにスタッフに電話をして伝えたいです!本当にありがとうございます。」
受賞後のコメント
農業で毎日忙しい両親の姿を見て、農業だけはしたくないと思って育ちましたが、自身の出産をきっかけに、就農しました。 地域の方々と持続的につながりながら、愛娘には「農業をしているママは素敵」と思って もらえるように生きていきたいです。
ベストカンパニー賞
続いてベストカンパニー賞の発表です。
ベストカンパニー賞に選ばれたのは、株式会社ドロップさんです!
受賞理由(講評)
「年齢、性別、固定的な役割分担意識などに関わらず、各メンバーが経営ビジョンを共有し、それぞれの個性を活かした農業経営を行っている法人」に贈られるベストカンパニー賞ですが、ノミネートされた会社はまさに三者三様で、接戦でした。
その中でも、可能性を秘めた企業から横展開ができるように、ぜひロールモデルとしてナレッジを発信してほしいという思いから選びました。
株式会社ドロップさんはもちろん、ノミネートされた三社すべての今後の活躍をお祈りしています。
受賞者喜びの声
「ありがとうございます。苦しい中どのように乗り越えたかを発信し、これから農業法人として成長を目指したい方の背中を押せる存在でありつづけたいです。
人的資本経営はどの農場でも取り組めるもので、必ず経営発展につながる要素になると思っています。これからも一人ひとりが主役になれる組織づくりを心がけていきます。」
受賞後のコメント
自社内の加工施設で近隣のトマト農家の受託加工を行い、水戸市をフルーツトマトの一大 産地にすることを目指します。将来的には上場したいとの夢も描いています。 農業界の発展の一助となるよう、今までチャレンジしてきた「人を活かす仕組みづくり」を発信していけたらと思います。
ベストユース賞
続いてはベストユース賞。こちらは食・農・くらしの未来に向けた新たな発想によるアイデアを提案する若者(小学生以上25歳未満)に贈られます。
受賞されたのは伊藤佑真さんです!
受賞理由(講評)
三者三様のアイデアで特徴も違い、審査会での点数は割れました。最終的に伊藤さんが選ばれたポイントは、「おいしいものっていいよね」というシンプルなモチベーションを持ちながら、課題解決の一歩を踏み出していることです。
仲間も増やしながら、実際に動き出されていることを評価いたしました。他二者のプロジェクトも今後もぜひ続けていただき、農業の発展に寄与いただければと思います。
受賞者喜びの声
「ありがとうございます。僕自身、4月に学生最後の1年を迎えます。最後の1年も、蜂さんと鹿さんと猪さんと仲良く過ごしていきたいと思います!」
受賞後のコメント
自然の恵みを食べることが大好きな仲間が集まり、農業に関わっていきたいという思いで取り組んでいます。獣害に悩むたくさんの農家から依頼が来ており、取り組みの規模を拡大していきたいです。
ベストグループ賞
ベストグループ賞に選ばれたのはTUMMY株式会社さんです。
受賞理由(講評)
どの分野もみなさんおもしろかったのですが、TUMMY株式会社さんはぶっちぎりでほぼ満点でした。
課題とソリューションでしっかり成り立っている事業であり、他の方と一緒に農業界に寄与して下さるのではないかなと思います。
受賞者喜びの声
「素晴らしい賞をいただきありがとうございます。
代表としてステージに立たせていただいてはいますが、仲間たちがオンライン配信を楽しく見てくれていて、みんなととることができた賞なので、喜びをわかちあいたいです。
今回はアワードということで順位をつける会ではありますが、農業は世界をごきげんにする業界だと思っています。みなさんと一緒に手をとりあって乗り切りたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。 」
受賞後のコメント
食の「作り手」と「食べ手」の関係をつなげるのは、食への愛だと思っています。農家じゃないからこそ提案できる食へのさまざまな「関わりしろ」を、たくさんの方々と共に創っていきたいです。
ベストウーマン賞
いよいよ最後の発表です。
ベストウーマン賞に輝いたのは辻朋子さんです!
受賞理由(講評)
ベストウーマン賞とは、「異業種との連携など新たな発想により、食・農・くらしの活性化に向けたビジネスアイデアを提案する女性農業者」に贈られる賞です。
辻さんは嚥下困難者向けのお粥製品の新規開発という、さらに今後の需要が見込まれる分野で活躍されています。「地元のお米と全国をつなぐ」という夢が叶うことを願います。
フードロスなどの生産者課題や社会課題、就業者支援事業との連携など、幅広い課題に取り組む優しい思いに感動しました。技術とアイデアからの素晴らしいビジネスイノベーションだと評価しています。
他のファイナリストの方も、とても見込みのある事業に感じました。ぜひ事業が進められることを見守っていきたいと思います。
受賞者喜びの声
「ありがとうございます。私は3年前、農業に新規参入しました。ところが、酒米の本場である兵庫県に移住をするも、コロナ禍ですべてがストップ。苦渋の決断で、米粉に挑戦することとなりました。
米粉というアイデア提供や、パン屋さんの支持から手ごたえを感じ、ここに立つことにつながりました。みなさんのご支援の賜物です。今後もがんばっていきたいと思います。」
受賞後のコメント
就農直後にコロナの影響で酒米の需要が激減し、苦しい中で、「誰もが迎える人生最後の日においしいものを食べてもらいたい」という一心で考えたアイデアです。今後は、全国の農家がα化米粉を作る時のお手伝いや、アジアへの輸出にもチャレンジしていきたいです。
全体を通した講評
最後に株式会社マイファーム代表取締役 西辻一真より、大会全体を通した講評です。
このたびはご参加ありがとうございました。
「農業女子アワード」は順位をつけるイベントではありますが、参加してくださったみなさんはオンリーワンです。みなさんの個性をこれからも磨き続けていただければと思います。
接戦のグループも、ダントツのグループもありました。1位を選ぶのは心苦しく、甲乙つけがたいものでした。
最後の決め手となったのは、「人的資本」です。資本主義社会では勝ち組がどんどん勝ち、負け組が待つ社会。そこで大切になるのは「人を大切にする」ということです。
農業においては人的資本を何に投下し、どう活用するかがキーポイントになるのだと思います。
バリバリの農業経営に充てる、地域の課題解決につなげる、それぞれの方向性がありますが、今回は特徴が表れたと感じました。
農業は「食と農」が問われることが多いのですが、今回のテーマにもある通り、「くらし」の部分がやはり印象に残りました。
生産者は人々の暮らしを考え、消費者も生産者のことを考える。同じ仲間が作り、食べている。これが「くらし」だと感じます。
これから長い目でみると、地球環境に対し貢献できるかがポイントになるでしょう。明確な打ち手を打てている農業者はまだほとんどいません。日本の農業者が示すことが、日本の農業の未来だと感じます。
ここにいるみなさんは全員仲間です。会は終わりますが、ご縁をつないで成長につなげていただけたらと思います。
受賞されたみなさま、本当におめでとうございます。