三崎さんが農と出会ったのは農業高校在学中のことでした。ある農家に「植物が生きている過程をいただいているんだよ」と教わり、農のおもしろさに惹かれます。東京農業大学へ進み、卒業後はスイスの農家で動物福祉に配慮した平飼い養鶏に触れ、「いつか自分も農家になりたい」という思いを育てていきました。
ただし、農業を仕事にするには家族の協力が要るため、就農は「定年後の夢」だと長らく胸の奥にしまっていました。その間も八百屋や飲食店で働き、農と食に間接的に関わりながら、プライベートでは体験農園マイファームを借りて、週末は土に触れていました。
農を仕事にする転機は、その体験農園にありました。区画を借りて野菜を育てるうちに農への思いはいっそう確かなものになり、体験農園のアドバイザーに背中を押されて、アグリイノベーション大学校へ入学します。世代も経歴もばらばらの仲間と学び、栽培技術から経営までを身につける中で、「やっぱり農業をやりたい」という気持ちは確固たるものとなりました。
2017年、三崎さんは夫婦で淡路島へ渡り、新規就農します。始まりは一反弱の耕作放棄地。眠っていた土を一枚ずつ開墾し、現在の畑は七反弱にまで広がりました。育てているのは、平飼いたまごの養鶏と、その堆肥を活用した露地野菜栽培。島の資源がめぐる循環型農業を、夫婦で少しずつ築いてきました。
そして三崎さんは今、農に触れる場をひらく側にもなっています。かつて自分が体験農園で農と出会い、次の一歩を差し出してもらったように。地域の農業体験を受け入れ、次の誰かの入口をつくる。一反の畑から始まった関わりは、人から人へ、農から地域へと広がり続けています。





