Social Impact Report 2026 ・ パイロット版

農と人との
のべ1,123万時間を、
この社会に生み出してきた。

株式会社マイファームは「自産自消のできる社会」を目指し、農と人との関わりを生み続けてきました。その歩みを、関わった人数ではなく、関わった時間の総量という物差しで測ります。

軸① 農的関与時間(累計)
1,123時間
2010〜2026年8月期・全事業の延べ関与時間
軸② 社会実装(累計)
230
国・自治体・企業との協働/海外5カ国
単年度の農的関与時間
169時間
2026年8月期・全事業の合計
Who we are

マイファームは、「人と自然の距離を近づける」ことを使命に、
農と人との出会いを事業として生み出す会社です。

2007年創業。目指すのは「自産自消(じさんじしょう)のできる社会をつくる」こと。都市の体験農園から本格的な農業学校、自治体・企業との連携まで、農に関わるあらゆる入口を運営しています。

体験農園・貸農園

週末に土に触れられる市民農園を全国で運営

農業学校・教育

就農を目指す人が学ぶアグリイノベーション大学校など

自治体・行政連携

国・自治体と組み、地域に農業の仕組みを実装

企業連携・コンサル

民間企業の農業参入や産地開拓を支援。海外5カ国にも展開

担い手・農地の再生

WE農協(当社設立の全国農協)で就農者の育成と農地再生へ

自産自消(じさんじしょう)とは ── 自分でつくって、自分で食べる。一人ひとりが様々な農と関わりを持てる社会を指す、マイファームの言葉です。
01WHY ・ 私たちが挑む社会課題

農業が地域から消えると、
里山も、食文化も、失われる。

基幹的農業従事者の平均年齢
68.7
出所:農林水産省「農業構造動態調査」
全国の耕作放棄地面積
42万ha
出所:農林水産省「荒廃農地調査」
担い手不足の深刻化
農業人口は
減る一方
継続的な拡大傾向

「合理的な農業」だけでは、日本の農は守れない

産業の目線で農業を合理化すれば、規模の拡大や工場型の生産に向かいます。しかしそれが成立するのは、大きな面積を確保できる北海道のような土地と、大消費地に近い東京近郊だけです。

01
農業の合理化・大規模化

規模拡大・工場型生産へ。効率と量を追求する。

02
成立するのは
限られた土地だけ

大面積が取れる北海道、大消費地に近い東京近郊。それ以外では成り立たない。

03
中山間地・地方の産地が
消えていく

食料の確保は多少カバーできても、地域から農業そのものが失われる。

04
里山も、食文化も
失われる

農業が地域から消えれば、里山の景観も、その土地の食文化も、次世代に残らない。

私たちの答え
だから私たちは、自産自消のできる社会を目指します。
消費者(生活者)と生産者(農業者)のあいだに、
農に触れる人を増やすことで、次の世代へつなぐ。

そのために生まれたのが、二つの物差しです。人と農の距離を測る軸① 農的関与時間と、農業が地域に根づいた広さを測る軸② 社会実装。この二つは、上の社会課題に事業で挑んだ結果として生まれた、私たちのインパクトの尺度です。

02READ ・ 二つの物差し

二つの物差しで、インパクトを測る。

農を「暮らし」として広げる時間と、農を「産業」として社会に根づかせる仕組み。性質の異なる二つを、それぞれの単位で測ります。足し合わせず、別々に見ることが、私たちの誠実さです。

農的関与時間とは

人が土や作物、農の営みに実際に向き合った時間の総量を示す、マイファーム独自の指標です。関わった人数ではなく、どれだけ深く・長く関わったかで社会へのインパクトを測ります。単発の体験から、継続的な農園利用、農業を学ぶ時間まで、農との関わりのすべてを「時間」という単一の物差しで捉えます。

株式会社マイファームは、人が農に関わった時間の総量を示す独自指標「農的関与時間」を、2026年8月期の1年間で約169万時間創出しました。

Axis 01 ・ Time

農的関与時間

人が土や作物、農の営みに実際に向き合った延べ時間。「自産自消のできる社会」への距離は、関わった人数だけでなく、どれだけ深く・長く関わったかで測られる。

1,123万h

農と人をつなぐ / Connecting farming and people

Axis 02 ・ Implementation

農業エコシステムの社会実装

農が持続的に営まれる仕組み(担い手の育成・農地の活用・地域連携)を、自治体・国と協働で社会に実装した件数。単発で終わらせず、構造を残せているかを測る。

230

農と社会をつなぐ / Connecting farming and society

このレポートの読み方

軸①
農的関与時間

人が土や作物に向き合った延べ時間。関わった人数ではなく、どれだけ深く長く関わったかで測ります。単位は「時間」。

軸②
農業エコシステムの社会実装

農業が続いていく仕組みを、自治体や国と協働して地域に残した数。単位は「件数」と「農地面積」。

読み方
二つは足し合わせません

「時間」と「件数」は単位が違うため、合算した総合スコアは作りません。性質の異なる二つの成果として、別々にご覧ください。

03MARKET ・ 伸びしろ

奪い合う可処分時間。
農に取り戻す余地は、まだある。

私たちの真の競合は、他の農業事業者ではありません。人々の時間を奪い合う、あらゆるデジタル消費です。日本人の自由時間という巨大な市場のうち、農や自然に向かう時間はごくわずか。裏を返せば、伸びしろは計り知れません。

TAM・SAM・SOM の規模を示すファネル図
数値データを表示(TAM・SAM・SOM)
区分規模
TAM 日本人の自由時間約 1,358 億時間/年間
SAM 自然・農に向かう時間約 13.6 億時間/年間(TAMの約1%)
SOM 当社が生んだ時間約 169 万時間/2026年8月期(SAMの0.12%)
TAM ー 日本人の自由時間約 1,358 億時間 / 年1.24億人 × 1日3時間 × 365日。人々の可処分時間そのもの。
SAM ー 自然・農に向かう時間約 13.6 億時間 / 年レジャー・健康・学びとして農や自然に向かいうる時間(TAMの約1%)。
SOM ー 当社が生んだ時間約 169 万時間 / 2026年8月期マイファームが実際に生み出した農的関与時間。SAMのわずか0.12%。
約1,132億h
日本人が画面に費やす時間 / 年間
(SNS・動画視聴の概算)
VS
169万h
マイファームが農に取り戻した時間 / 2026年8月期
(これから広げる)
この 169万時間 は、けっして小さくない。2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)の農的関与時間を、実感できるスケールに置きかえると——
約1,860
が1年間スマホに費やす時間を、
まるごと農に取り戻したのと同じ量。
約1.6万
が週2時間、1年を通して
農に関わりつづける関与量。
毎日 約4,640h
日本のどこかで、毎日この時間
誰かが土といのちに向き合っている。

AI・SNS時代だからこそ。 テクノロジーが人の時間を吸い上げるほど、土に触れ、いのちを育てる時間の価値は高まります。わずか0.12%というSOMは、当社の伸びしろであると同時に、社会全体が農や自然との接点を取り戻す余地の大きさを示しています。この市場を耕すことは、ビジネスの成長であり、同時に人と社会の幸福の総量を増やすことです。

【出典・算定根拠】TAM:総務省統計局「人口推計」(日本の総人口 約1.24億人)および総務省統計局「社会生活基本調査」の生活時間区分をもとに、1人1日あたりの自由時間を3時間と保守的に設定して当社試算。 デジタル消費時間:各種メディア利用時間調査に基づくSNS・動画視聴時間(1人1日あたり約2.5時間)から当社試算。 SAM:自由時間のうちレジャー・健康・学びとして農や自然に向かいうる割合を約1%と仮定した当社試算。 SOM:当社の単年度実績(社内集計・A1サマリー参照)。
いずれも市場規模の厳密性より「農と人の接点における伸びしろの大きさ」を示すことを目的とした概算値であり、分母の精緻化は今後進めます。

04AXIS 01 ・ 積み上げ

積み上げてきた時間は、
今も最高を更新している。

接点・関与・没入のすべてを合わせた、年度ごと(単年度)の農的関与時間の推移です。開業以来、農と人との関わりの総量は右肩上がりに伸び続け、2026年8月期は169万時間に到達しました。2010年8月期と比べると約15.7倍です。

単年度 農的関与時間(全事業)
1,693,386 h / 2026年8月期
2010年8月期比
約15.7×
年度ごとの農的関与時間の推移グラフ
数値データを表示(年度ごとの農的関与時間)
年度農的関与時間
2010年8月期107,900 時間
2011年8月期292,392 時間
2012年8月期327,762 時間
2013年8月期324,458 時間
2014年8月期317,374 時間
2015年8月期380,756 時間
2016年8月期500,698 時間
2017年8月期545,814 時間
2018年8月期506,996 時間
2019年8月期556,412 時間
2020年8月期590,032 時間
2021年8月期765,968 時間
2022年8月期979,745 時間
2023年8月期1,149,495 時間
2024年8月期1,309,864 時間
2025年8月期1,339,358 時間
2026年8月期1,693,386 時間
全事業の単年度 農的関与時間(接点・関与・没入の合計)

全事業(体験農園・受託農園・農業学校等)の単年度フロー値の合計。体験農園は契約区画数(期末・実測)× 週5時間 × 52週、農業学校は入学者数 × 受講時間で算定。 事業の追加や運営受託の開始、データ整備の進展により、年度によって集計対象の事業が異なります(例:笠間クラインガルテンは令和4年度の運営移譲後、区民農園は令和7年度から計上)。 そのため各年度の値は「その時点で集計できている範囲の総量」であり、事業実態の全量とは一致しない場合があります。週あたり時間等の一部は暫定係数です。

2026年8月期の169万時間は、どの事業が生んでいるか

その169万時間の内訳です。性質が大きく異なるため、農園系(多くの人が短〜中時間関わる)農業教育系(少数が長時間学ぶ)を分けて示します。

農園系(接点・関与)
1,640,436 h / 96.9%
体験農園・貸農園直営
1,075,620 h
千葉市ふるさと農園受託・接点
238,220 h
世田谷区民農園受託・関与
234,624 h
川越市民農園受託・関与
66,352 h
笠間クラインガルテン指定管理
25,620 h

延べ12.8万人が関与。単発利用の2時間から、体験農園の年260時間まで幅がある。裾野の広さで総量を生む。

農業教育系(没入)
52,950 h / 3.1%
アグリイノベーション大学校110名 × 202h
22,220 h
南相馬市 みらい農業学校13名 × 1,690h
21,970 h
丹波市立 農の学校6名 × 1,460h
8,760 h

わずか129名だが一人あたり410時間。人数の1%未満で総量の3%を生む、最も深い層。

合計(2026年8月期/全8事業) 1,693,386 h
農業教育事業の見方

農業学校は1年間の課程のため、上記は2026年8月期の入学者数(アグリイノベーション大学校 110名/みらい農業学校 13名/農の学校 6名)に、それぞれの受講時間をかけて算出した単年度の数字です。一人あたりの時間が長いため、人数は全体の1%未満でも生み出す関与時間は農園系の一部に匹敵します。累計では7,228名が学び、のべ78万時間に達しています(うち成熟ジャーニー4ステージの対象は6,254名。ほかにオンライン講座等974名を含みます。詳細は06ページ)。

05AXIS 01 ・ 三層構造

広く出会い、深く没入する。
関与の三層構造。

農との関わりは一様ではありません。触れる人は多く、没入する人は絞られる。しかし一人あたりの関与時間は、層が深まるほど劇的に増えます。接点で2時間だった関わりが、関与では年204時間、没入では年410時間へ。人数のピラミッドと、時間の深化が同時に起きています。

接点人口延べ12.1万人 ・ 一人あたり 2時間(2026年8月期)
関与人口6,840人 ・ 一人あたり 204時間/年(2026年8月期)
没入人口129人 ・ 一人あたり 410時間/年(2026年8月期)

※接点人口は笠間・千葉市ふるさと農園等を計上開始。イベント・オンライン等の追加でさらに底辺が広がる。

一人あたり関与時間の深化
接点
2h/年
基準
関与
204h/年
約100倍
没入
410h/年
約200倍
1
接点 — 農に出会うイベントや単発体験で、農をはじめて自分ごとにする入口。
2
関与 — 農を続ける体験農園・区民農園で継続的に土に触れる。一人あたり年204時間。
3
没入 — 農を生業に農業学校で本格的に学ぶ。一人あたり最大1,690時間。
人数は絞られ、一人あたりの時間は深まる
06AXIS 01 ・ 成熟ジャーニー

農を仕事にする人は、学ぶほど
短い時間で成果を出せる経営者になっていく。

ここまでは「関与時間が増えること」が価値でした。しかし農を仕事にしていく段階では、話が逆転します。就農準備では一人あたり261時間をかけてじっくり学び、学びを重ねるほど短い時間で成果を出せる経営者になっていく——それは経営力が身についた証です。教育の成果は、時間の長さではなく自立の速さに現れます。

成熟ステージと関与の深化
人数は絞られ経営力と専門性は高まっていく
成熟ジャーニー 各ステージの人数と経営力の推移グラフ
数値データを表示(成熟ジャーニー 各ステージの実績)
ステージ人数(累計)一人あたり関与時間累計関与時間
STAGE 01 就農準備2,760 名261 時間721,127 時間
STAGE 02 学びの深化1,943 名2 時間4,846 時間
STAGE 03 新人農業者627 名45 時間28,360 時間
STAGE 04 プロへ924 名30 時間27,753 時間
各ステージの人数(棒) 経営力・専門性の高まり(曲線)
STAGE 01
就農準備

新規就農を目指す段階。アグリイノベーション大学校・農の学校・みらい農業学校で本格的に学ぶ。

2,760
一人あたり 261時間/累計721,127h
STAGE 02
学びの深化

農業教育を受けている人・学生が、さらに農を深める段階。農育講座・学生向け研修など。

1,943
一人あたり 2時間/累計4,846h
STAGE 03
新人農業者

農業者としてスタートした人向け。就農直後の実践力を高める研修。

627
一人あたり 45時間/累計28,360h
STAGE 04
プロへ

農業者がプロとしてレベルアップする段階。各種経営塾で経営を磨く。

924
一人あたり 30時間/累計27,753h

色が濃いほど成熟度が高い。就農準備では長時間かけて基礎を学び、プロへ向かうほど短時間の実践的な研修に移ります。※一部の受講者数は暫定値を含みます。

農を仕事にした人の価値は、もう「農にいた時間」では測れません。少ない時間で作物を育て、経営を回し、地域に雇用と農地の担い手を生む——その成果は時間ではなく、社会に残した仕組みの広さで測るべきものです。ここから先を測るのが、次にご紹介する軸② 農業エコシステムの社会実装です。

07AXIS 02 ・ 農業エコシステム

農業が続く仕組みを、
地域に残していく。

軸②が測るのは、農業が地域や社会に「根づいた広さ」です。人の関わりが増えるだけでなく、農地が使われ続け、担い手が育ち、地域に仕組みとして残る——その総量を測ります。中心となる物差しは農地の面積(ヘクタール)、補助として自治体・国・企業と組んだ事業の件数を見ます。
※「農業エコシステム」=農業が続いていくための仕組み全体(担い手・農地・地域の連携)を指す言葉です。件数は行政案件201件+コンサル案件29件の合算。農地面積は判明分のみの計上で、整備を進めています。

230
社会実装 累計
30主体
国+24都道府県+海外5カ国
21.9ha
関与農地面積(判明分)
マイファームの全国事業地マップ

マイファームの事業地(★はオフィス所在地)/ 出典:社内資料

国(省庁)
83
沖縄県
33
千葉県
17
大阪府
14
福島県
10
茨城県
9
広島県
8
その他20地域
56

※地域別の件数は、案件の実施地域ごとに集計したものです。複数県にまたがる案件は主たる実施地域に計上しているため、合計は社会実装累計230件と一致します。 「国(省庁)」は農林水産省・内閣府・経済産業省等との全国事業、「その他20地域」には海外5カ国および全国展開の企業案件を含みます。

リスク分散という強さ

農業は地域ごとに気候・作物・災害リスクが異なります。特定の地域に依存せず全国に社会実装を広げていることは、一つの不作や災害に揺るがない、しなやかな農業エコシステムを築いていることを示します。

中央と地域の両輪

農林水産省・内閣府・経済産業省など中央省庁との全国事業(83件)が政策の軸を、各都道府県との事業が地域の現場を担う。さらに民間企業とのコンサル案件が産業側から実装を進め、海外5カ国にもモデルを展開しています。

08LOGIC ・ 二軸をつなぐ

関わりを深めた先に、
社会の仕組みが生まれる。

農的関与時間(軸①)を積み上げた先に、担い手が育ち、地域に農業の仕組みが実装されます(軸②)。時間の蓄積が、社会構造の変化へと転化する。二つの軸は、一本の因果でつながっています。

AXIS 01
農的関与時間

広く農に触れ、深く没入する人を育てる。とりわけ「プロへ」向かう頂点層が、次の担い手となる。

TRANSFORM
AXIS 02
社会実装 230件

育った担い手と知見が、自治体・国との協働事業として地域に根づく。農業が続く仕組みそのものを残す。

同一の教育事業(経営塾・研修等)は、軸①では「時間」として、軸②では「件数」として計上される。単位が異なるため合算はせず、性質の違う二つの貢献として別々に示す(多面的貢献)。

09A STORY ・ ひとつの循環

体験農園で土に触れた人が、
島に根を張る農家になるまで。

数字の向こうには、一人ひとりの歩みがあります。ここに紹介するのは、体験農園から農業学校を経て就農し、いまは自ら農への入口をひらく側になった方の物語です。この歩みそのものが、私たちの二つの軸の循環を体現しています。

島ノ環ファームの三崎咲さん 収穫作業のようす 古民家の前に立つメンバー

島ノ環ファーム(兵庫県淡路島)/ 三崎咲さん
体験農園マイファーム → アグリイノベーション大学校 → 就農

体験農園で週末に土へ 農業学校で本格的に学ぶ 夫婦で新規就農 耕作放棄地を再生 次の誰かの入口をつくる

三崎さんが農と出会ったのは農業高校在学中のことでした。ある農家に「植物が生きている過程をいただいているんだよ」と教わり、農のおもしろさに惹かれます。東京農業大学へ進み、卒業後はスイスの農家で動物福祉に配慮した平飼い養鶏に触れ、「いつか自分も農家になりたい」という思いを育てていきました。

ただし、農業を仕事にするには家族の協力が要るため、就農は「定年後の夢」だと長らく胸の奥にしまっていました。その間も八百屋や飲食店で働き、農と食に間接的に関わりながら、プライベートでは体験農園マイファームを借りて、週末は土に触れていました。

農を仕事にする転機は、その体験農園にありました。区画を借りて野菜を育てるうちに農への思いはいっそう確かなものになり、体験農園のアドバイザーに背中を押されて、アグリイノベーション大学校へ入学します。世代も経歴もばらばらの仲間と学び、栽培技術から経営までを身につける中で、「やっぱり農業をやりたい」という気持ちは確固たるものとなりました。

2017年、三崎さんは夫婦で淡路島へ渡り、新規就農します。始まりは一反弱の耕作放棄地。眠っていた土を一枚ずつ開墾し、現在の畑は七反弱にまで広がりました。育てているのは、平飼いたまごの養鶏と、その堆肥を活用した露地野菜栽培。島の資源がめぐる循環型農業を、夫婦で少しずつ築いてきました。

そして三崎さんは今、農に触れる場をひらく側にもなっています。かつて自分が体験農園で農と出会い、次の一歩を差し出してもらったように。地域の農業体験を受け入れ、次の誰かの入口をつくる。一反の畑から始まった関わりは、人から人へ、農から地域へと広がり続けています。

この歩みは、二つの軸がつながる姿そのものです。接点 → 関与 → 没入(軸①)と深まった一人が、耕作放棄地の再生と、地域に農の入口をつくること(軸②)を生み出しました。暮らしとして始まった農が、産業と地域を育てていく。
10NEXT ・ これから実証すること

AIが生む「余白」を、
どこに使うのか。

AIとテクノロジーは、人に時間の余白をもたらします。その余白が、そのままAIやデジタルに吸い上げられるのか。それとも、あえて自然や農との時間に使うのか。私たちは後者に、社会全体の大きな可能性があると考えています。そしてそれを、これから科学的に実証していきます。

仮説 01
働き手の健康とパフォーマンス

自然や農と触れ合う時間が長いほど、ウェルビーイングが高まり、働くパフォーマンスが上がる。労働人口が減る社会において、健康な働き手が幸せに働けることは、そのまま経済効果につながります。

仮説 02
健康寿命の延伸と社会保障費

農的関与時間が健康寿命を延ばす。高齢者が健康な期間を長く保てれば、増加し続ける医療費・社会福祉予算の抑制に寄与できます。

検証体制
大学・医学研究者との共同研究

大学および医学研究者と連携し、農的関与時間と健康・ウェルビーイングの関係をファクトとして示していきます。2027年8月期から研究予算を確保し、2030年8月期までの実証を目指します。

実証のロードマップ
2027年8月期研究予算を確保
共同研究の設計・開始
2028–29年8月期データ蓄積
相関・因果の検証
2030年8月期ファクトとして実証
経済効果の定量化

実証できれば、農的関与時間は「社会にとって良いこと」から「経済的にも合理的な投資」へと位置づけが変わります。企業の健康経営、自治体の健康寿命施策、そして農業の担い手確保——三つの課題を同時に解く道筋になると考えています。

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